粉末回折データ前処理アプリ exterm3

2021 年 11 月 16 日

Python コードとテスト用データ,設定ファイルをまとめて圧縮したファイル exterm3.7.2.zip (圧縮ファイル, 5.8 MB) を公開しています(2021年11月16日に更新しました)。元のコードに含まれていたバグは,2020年に名古屋工業大学工学部生命応用科学科4年生の櫻井紀宏さんによって修正されました。

exterm3 の動作確認をするための手順についての日本語記事 (PDF 71 kB) を2020年11月12日に公開しました。

exterm3 をデモンストレーションする内容の日本語記事 (PDF, 1.1 MB) を 2020年11月17日に公開し,2020年12月9日に更新しました。

exterm3 をデモンストレーションする内容の英語記事(PDF, 1.9 MB) を 2021年11月16日に公開しました。

exterm3 は3つの設定ファイル dct.cfg と cntmn.cfg, xray.cfg を用いるように設計しています。これは,この3つの設定ファイルを更新する頻度は,それぞれ異なることが予想されるからです。ほとんどのユーザーは,測定試料を変更するときや測定条件を変更するたびごとに主な設定ファイル “dct.cfg” の内容を変更する必要があると予想されます。補助的な設定ファイル “xray.cfg” は,銅以外の金属をターゲットとするX線源を用いるときには変更する必要があり,銅ターゲットのX線源を用いる場合でも Cu Kβ フィルターとして用いる Ni 箔を替えるときや,使用する加速電圧を替えるときなどに変更する必要があるかもしれません。もう一つの補助的な設定ファイル “cntmn.cfg” はX線発生用の管球の製造会社が変わったときなどに変更すべきかもしれません。

exterm3 のための設定ファイル “dct.cfg” について解説した日本語記事 (PDF, 724 kB) を 2020年11月17日に更新しました。

先に発表した粉末回折データ前処理アプリ exterm2 に修正と改良を施し,exterm3 としました。Windows と Mac OS で動作するアプリケーションも準備したのですが,筆者の使用する Python コンパイラ・リンカ(PyInstaller)が生成する実行可能形式ファイルは無駄にサイズが大きいと思われるだけでなく,Mac OS 上では Python インタープリタでソースコードを走らせるよりかなり遅いという状況であり,実行可能形式ファイルの配布は保留しています。

exterm2 からの変更点を以下に記載します。

  • 赤道発散収差の処理について「ビームが試料からはみ出す場合」にも対応するように改良しました。はみ出しによって生じる見かけ強度の減少も自動的に修正されます。これにともなって,exterm2 では「ビームのはみ出しが起こる角度」で生じていた異常な挙動が解消されました。確認はしていませんが,自動可変散乱スリットを用いた照射幅一定測定にも対応することが期待されます。
  • 赤道発散収差の処理について,exterm2 では収差の影響の1次・3次キュムラントを近似的にしか修正しませんでしたが,exterm3 では厳密に修正します。
  • 試料透過性収差の処理について,exterm2 では「試料の有限の厚さ」にまったく対応していませんでしたが,exterm3 では収差の影響の1次・3次キュムラントは「有限厚さ試料」の場合でも厳密に修正することが試みられています。
  • Python コードをコンパイルしてライブラリとリンクした Windows 10, Mac OS 10 で動作するスタンド・アローン・アプリケーションも著者の手元には存在します。しかし,無駄に大きく動作が遅く,配信は保留しています。現状で Mac OS の場合,Python コードをインタプリタで動作させた方が高速に動作します。
  • 数値的なフーリエ変換処理のための余白(パディング)領域の幅は,ユーザー指定とするように exterm2 とは設定 (configuration; .cfg) ファイルの仕様を変更しました。

exterm2 に関する技術情報は J. Appl. Cryst. (2020) [doi: 10.1107/S1600576720005130 ] で出版されています。 exterm3 に関する技術情報の一部は Denver X-ray Conference (2020) で発表しました。詳細は Advances in X-Ray Analysis に投稿しました。